授業メモ:非市場戦略(Nonmarket strategy)とは

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みなさんこんにちは。
ワシントンDCではもうすぐ桜が咲くかと思っていましたが、先週の突然の雪のため少し先に延びてしまったようです。

今日は、非市場環境に対する戦略について、書こうと思います。

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Georgetown UniversityのMBAの特徴として、公共政策等ビジネス以外の影響要因がどのようにビジネスに影響し、ビジネスはそれらの要因(Nonmarket environment:非市場環境と呼ばれています)にどう対処すべきかというテーマを掘り下げる専攻(Certificate in Nonmarket Strategy)があります。今学期からこのテーマに関する授業が始まりました。今回は、この前提となる基礎的な考え方をまとめようと思います。

非市場環境(Nonmarket environment)とは?

企業活動に影響を与える要因には、どのようなものがあるか?最初に思いつくのが、需要や供給といった要素かと思います。これらは、市場のルールと契約に支配されている、企業と顧客・サプライヤーの自由な取引の結果です。自由経済の世界と言えるかもしれません。

一方、現実の世界は、完全な自由経済ではありません。なぜなら、企業の経済活動は、社会的・政治的・法的な制約を受けるからです。これらの制約は、自由経済の世界の市場のルールや契約とは別ですが、それらと互いに影響を及ぼしあいます。

前者が市場経済の経営環境(市場環境:Market environment)であるとすると、後者は非市場経済の環境(非市場環境:Nonmarket environment)と言えます。つまり、現実の企業は、市場経済の環境と非市場経済の環境の交じり合った世界で活動する必要があります。例えば、完全に自由な市場環境では、企業は顧客のニーズに応える製品を売ればそれでよいかもしれません。ところが現実世界では、企業は社会的な規範に反する製品は販売できないし、企業活動は法による規制(アンチトラスト、関税、安全規制、その他いろいろ)を受けます。そのため、企業は市場経済における戦略(Market strategy)だけでなく、非市場要因に対応する戦略(Nonmarket strategy)を持つ必要があります。

市場環境と非市場環境の関係性

市場環境と非市場環境は互いに関係しあっています。

市場環境は、企業にとっての非市場環境の重要性を決める要因になります。例えば、輸出に依存する産業と輸入に依存する産業では、ある通商政策によって受ける影響が大きく異なります。

一方、非市場環境は、市場環境における企業の機会(Opportunity)を決める要因となります。例えば、黎明期の産業は、法規制によってその将来が大きく影響されます。また、銃規制を求める市民運動が盛んになると、銃を製造するメーカーは影響を受けます。

非市場環境を分析する4つのI

戦略を立てるためには、まず環境を分析する必要があります。市場環境を分析するツールは、様々なフレームワークが存在します。(以前こちらの記事に、一例をまとめました)

では、非市場環境を分析するには、どのような考え方をすべきなのでしょうか?今回は、「4つのI」をご紹介します。

4つのIとは、Issue(課題)Interest(利益団体)Institute(規制主体)Information(情報)で、非市場環境を分析する際には、この4つのIそれぞれを分析することが有効です。

Issue(論点)

非市場環境を分析するためには、その構成要素を特定しなければいけません。例えば、「排出物に含まれるNOXの規制値」「自動運転自動車の交通法規」など、個々の論点を取り上げます。

Interest(利害関係者)

どのような立場のどのような関係者がかかわっているのかを知ることは大切です。個々の企業・業界団体などは分かりやすい例です。その他、NGO・労働組合・研究機関等も利害関係者の例です。これらは全て組織されている団体ですが、広く納税者・有権者・非正規労働者など組織だっていない主体も利害関係者になり得ます。

Institute(規制主体)

非市場環境のルールを規定する主体です。国会・省庁・地方自治体など自国の立法府・政府のほか、他国の政府や国際機関も含まれます。また、ニュースメディアやソーシャルメディアも、(法ではありませんが)様々なルールを作る力を持っているため、Instituteに含まれます。

Information(情報)

ある論点に対して、異なる主体は異なる情報を持っています。新たな科学的知見は企業の経営環境に影響を与えますし、企業が政策に影響を与えようとする活動(ロビイング)においては、自分しか持っていない情報を提供することは重要な活動の一つです。

これらの4つのIに注目すると、非市場環境の分析の取り掛かりになります。

(余談ですが、この業界は皆さん「X個のなんとか」が好きなようで…笑
「3つのC」とか「4つのP」とか「7つのS」とか。なんでも「X個のなんとか」にまとまっています。覚えやすくはありますが、何も無理しなくてもという感じも…。非市場のツールもこれにあやかっているようです)

非市場環境のライフサイクル

非市場環境は、時間が経過するにつれ、ある段階から次の段階に移っていきます。

例えば、規制政策の場合には、「課題認識」「利害関係者の構成」「法制化」「規制の実行」「規制の定着」というライフサイクルを経ます。

企業が影響を受ける程度や、逆に企業が影響力を行使できる程度は、段階によって異なります。例えば、課題が認識され始めている段階では、企業は積極的に情報を発信したり、早く利害関係者を取りまとめることによって、制度設計に影響を及ぼせる可能性が高いです。しかし、いったん法律が施行されてしまうと、その法律を改廃するための労力は大きく、一企業が働きかけたところで影響は限定的かもしれません。

以上、授業の導入部分で習った内容をまとめました。今後、実際の企業の例なども学ぶことと思いますので、面白い内容があればご紹介します。公共政策、環境問題、不買運動など、市場環境以外の要因が企業活動に影響するということは、言われてみれば当たり前ですし、個別の事例については知っているようなつもりでいました。しかし、今回の授業のように体系的に整理された考え方を学ぶと、今後個別の事例を見たときのとらえ方が変わってくると思います。今後の授業が楽しみです。

今回の記事は、Business and Its Environment (David P. Baron著 2012年)の第一章と第二章の内容に基づいています。私の説明より分かりやすいかと思いますので、ご関心のある方は読んで原著を読んでいただくと良いと思います。

 

 

写真は、雪が積もったArlington地区の様子です。

こちらでは、降雪の予報が出ると道路に”塩”(多分塩化カルシウムか何か?)が事前に撒かれます。そんなに大量に撒かなくてもというぐらい撒くので、心配になります…。

桜が咲くまで、しばらくかかりそうです。皆様良い一日を!

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