MBA授業メモ:国境を超えるモノと情報、国境を越えられない人

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皆様こんにちは。ワシントンDCはあっという間に春が過ぎ、初夏を感じるようになりました。日本はゴールデンウィークですがアメリカでは関係なく、淡々と毎日が進んでいきます。

さて、今日はグローバル化についての授業で面白かったトピックがあるので、まとめてみたいと思います。
グローバル化はどのように引き起こされ、人々の生活や企業活動にどのような影響を及ぼすかについてです。The Great Convergence: Information Technology and the New Globalization (Richard Baldwin著・2016年)のIntroductionの内容に基づいています。

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グローバル化の3要素(モノ・情報・人)

現代は、グローバル化した時代である。モノやサービスが国境を越えて取引され、人も情報も国境を越えて行き来している。昔、例えば今から300年前は、このような国境を越えた行き来は非常に限られていた。一方、将来、例えば今から300年後には、このような国境を越えた行き来はますます盛んになっていると考えられる。つまり、グローバル化は、過去から現在そして未来へと続いている。

グローバル化の要素、つまり、国境を超えて動くようになるものはなんだろうか?ジュネーブ国際開発高等研究所のBaldwin教授によると、それは、モノ・情報・人である。これら3要素の動きを大きく変える出来事が、過去に2回あった。

最初の出来事は、1800年代初期の蒸気機関の実用化である。これにより、国をまたぐような長距離にわたってモノを移動させるコストが大きく下がった。次の出来事は、1980年代の情報通信技術の進歩である。これにより、海外に情報を伝えるコストが大きく下がった。つまり、3要素全てで移動コストが高かった時代から、2つの要素の移動が、順に楽になった。

なお、最後の要素である人の移動コストは、まだ高いままである。もちろん、国際線が便利に利用できるようになり航空券の価格も安くなってきている。しかし、どんなに急いでいる人もどんなにお金持ちの人も、東京からニューヨークに移動するためには10時間以上飛行機に乗らなければならない。

第1のグローバル化(モノの移動)がもたらしたもの

3要素全ての移動コストが高かった時代、経済は各地域内で回っていた。地元で生産された商品が、地元で消費されていた。

そこに第1のグローバル化が起こってモノの移動コストが下がった。一方で、情報と人の移動コストは高いままである。モノが簡単に移動できるようになったことから、製品を販売する市場は、地元から世界に広がった。一方、情報と人は動かせないので、生産の拠点は地元のままである。世界は、売る側と買う側に分かれた。

低い移動コストによるメリットを享受できたのは誰か?科学技術の進んでいた列強、現在の先進国である。G7各国(アメリカ、ドイツ、日本、フランス、イギリス、カナダ、イタリア)が世界全体の総収入に占める割合は、1500年代から1800年代初頭までは15%から20%程度であった。ところが、第1のグローバル化が1800年代初頭に始まってから、1880年には約40%、1910年には約50%、二度の大戦を挟んで1960年には約70%と、急速にシェアを伸ばした。第1のグローバル化は、南北格差とも呼ばれる、先進国と途上国の格差を引き起こした。

第2のグローバル化(情報の移動)がもたらしたもの

この流れに変化が起きたのは、1980年代である。製造業の拠点が先進国から周囲の国に移り始めた。前述のG7各国のシェアは、1990年の約70%をピークに急速に下がり始め、2010年には50%を切っている。一方、製造業の世界シェアを見ると、G7各国のシェアは1990年の約65%から2010年の約50%まで、徐々に低下している。一方、I6(Industrializing six、工業化6か国)と呼ばれる国(中国、韓国、インド、ポーランド、インドネシア、タイ)は、1990年の10%程度のシェアを、2010年には約25%にまで伸ばしている。G7とI6以外の国のシェアは、25%から30%程度で一定している。つまり、先進国は製造業のシェアを落とし、I6と呼ばれる一部の国がシェアを伸ばし、それ以外の国のシェアは変わっていない。この現象は、第2のグローバル化と呼ばれる。

なぜ製造業の移転が起こったのか?情報通信技術の進歩による、情報の移動コストの低下である。先進国企業は、途上国に生産拠点を置いて、現地の安価な労働力を活用し本国の技術やノウハウを持ち込むことで、コストを下げることを目指した。

一方で、企業は技術やノウハウを自社のコントロールできる範囲にとどめ、社外に伝えることしなかった。そのため、第2のグローバル化は全ての途上国に広く行きわたるということはなく、I6という限られた国にとどまっている。なぜI6なのか?著者は、先進国からの物理的距離を理由として挙げている。情報伝達コストは下がったが、実際に人が移動するコスト(第3の要素)は高いままである。つまり、移動コストの低下が2つの要素(モノ・情報)だけに限って起こったので、かつての途上国のうち一部だけがシェアを伸ばしている。

第1のグローバル化による変化は、国単位で起こった。しかし、第2のグローバル化による変化は、国という単位にとどまらない変化である。製造業の海外移転における勝者は規模の大きい多国籍企業であり、敗者はI6に移転された仕事を元々していたG7の国民である。ある国の企業が海外移転によって収益力を高めても、その国民の賃金が上がるわけではない。

第2のグローバル化による変化として製造業の海外移転が挙げられるが、実際にはほかの産業にも様々な変化をもたらしている。情報通信技術は現在も様々な進歩を続けており、今後も新しい変化が生じるはずである。

第3のグローバル化の可能性

最後の要素である、人の移動コストが劇的に下がる時代は来るのであろうか?テレプレゼンスやテレロボティクスの技術の進歩で、人の移動を代替できる技術が作られることは、あるかもしれない。

考えたこと

産業革命後のG7のシェア拡大、そして1980年代以降の新興国の台頭を、3つの要素で説明できるのは単純に面白いことだと思います。世の中の大きな変化を方向付ける力が何かを理解することで、今後の変化に思いをはせることもできます。(予想できるとまでは、言い切れません…)

一方、第2のグローバル化による世界の変化は、製造業移転にとどまらずもっと幅広いのではないかと思うのですが、今回の授業では触れられずでした。この本の残りの章を読めば良いのだとは思いますが…。フィンテックやブロックチェーン技術は、確かに情報の移動コストの低下が本質なのかもしれませんが、もう少し先を行くトピックのような気もします。

最後に、人の移動コストについて。短時間で海外に行ける時代はまだ先かもしれませんが、テレプレゼンスやテレロボティクス技術の進歩は、想像できる未来の範疇のように思います。日本にいながらパリの美容師に髪を切ってもらう、日本にいながらアメリカにいる友人とケープタウンで(バーチャルに)合流して、ワインを飲む。そんな時代に近づいているのかもしれません。そんな時代では、技術とデータを持っている大資本が勝つのでしょうか?アイデアを生み出す個人が、大企業を打ち負かすのでしょうか?生きやすい時代なのか生きにくい時代なのか、想像できません。

写真は、DCの桜です。こちらでは地面にシートを敷いて飲食することはないのですが、お花見は行われています。

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