アメリカ企業でのインターン-その2 快適に働ける理由

前回から、アメリカの公共交通コンサル会社でのインターンの体験談を書いています。私にとっては、初めてのアメリカの会社での仕事、初めてのコンサルティング会社での仕事、初めての中小企業での仕事、と初めて尽くしでした。それに加えて非常に新鮮だったのは、「日本と異なるワークスタイル」です。各種のツールを活用し、働きやすさを追求する文化の中で働いたことは、貴重な経験となりました。今回は、アメリカのインターン先でのワークスタイルについて書いてみようと思います。

働きやすさを追求する文化

F社で働き始めてすぐに気づいたこと、それは「全てが働きやすく快適に作られている」ということです。ワークスタイルが快適になるだけで、気持ちが心から楽になり、仕事そのものに集中することができました。いくつか具体例を挙げて書いてみようと思います。

電話を使わない

私のデスクには電話がありませんでした。社内で誰かとちょっとしたやり取りをする際にはチャット(Skype for Business)を使い、ある程度まとまった報告や相談をする際にはメールを送ります。

日本の派遣元の職場は、「電話する文化」でした。口頭で説明を加えるため、お願いやお礼の言葉を伝えるため、メールを送ったリマインドのため、ちょっとした確認のため、様々な理由ですぐに電話をしていました。電話がかかってくると、自分の作業が意図しないところで中断されます。電話で要件を伝えてもらっても形に残らないので、メモを取ったり残したりする必要があります。また、誰かにかかってきた電話を取り次ぐことも多く、その都度時間と集中力を奪われます。

F社で働き始めてから、電話にまつわるストレスがないことが非常に快適であることに気づきました。逆に言うと、日本では電話文化の中で知らず知らずのうちに相当なストレスを受けていたということです。

もちろん、電話で 気軽に打ち合わせができないので、様々な工夫が必要です。例えば、電話で補足する必要がないようなメールを書くためには、時間がかかります。特に、自分よりも忙しい相手に連絡をする時は、自分の側で工夫が必要です。言い換えると、受け手の時間を奪わないようにするため、発信側が工夫するという事です。強制的に受け手の時間を奪ってしまう電話に比べ、発信側で受け手に合わせたコントロールが可能であるという点で、チャットやメールが優れていると感じました。

リモートワークができる

F社では、週に2日まではリモートワークが認められています。私は長年の癖(?)でオフィスに行かないと落ち着かず、また、なるべく同僚と対面でコミュニケーションを取りたいということもあり、毎日会社に行っていました。しかしながら、「いざとなったら家で働いてもいいんだ」という安心感があるだけで気持ちが かなり楽になるものです。実際にほとんどの人がリモートワークを使っており、特に月曜日と金曜日はオフィスに人がまばらなこともあります。カフェで仕事をしていたりするのかと思って聞いてみると、ほとんどの人は「自宅」とのこと。身支度や移動時間が省略できると、やっぱり楽ですよね。前述のように、やり取りはチャットとメールが主体なので、同じ建物内にいなくても特段問題ありません。(リモートワーク中は、皆さんきちんとチャットがオンラインになっています)

出張よりも電話会議とWeb会議

普段の報告や相談はチャットやメールで行いますが、説明をしたり議論をしたりする場合には、直接話すこともあります。プロジェクトによっては遠いオフィスにいるメンバーと打ち合わせをする場合もありますが、そのような場合は電話会議やWeb会議を使います。MBAのグループワークでもそうでしたが、慣れてしまうと何ら不自由なく遠隔地のメンバーと打ち合わせができます。音声だけの時は電話回線を使った電話会議システムを使い、顔を見て話すときやデータを見ながら話すときはSkype for Businessを使っていました。

個人的に驚いたのは、面接です。なんと、インターン候補生としてF社の選考を受けた際も、Skype経由で面接が行われたのです。面接者2名と私の計3名での面接でしたが、面接者のうち1名は自宅から、もう1名は会社から、そして私は学校からという感じでした。自宅から面接している社員さんの後ろからはワンちゃんが鳴いている声が聞こえ、非常にリラックスして面接に臨むことができました(笑)。オフィスに呼び出して対面で面接する必要性がなければWeb会議で十分であり、非常に合理的だと感じました。

データもスケジュールも皆で共有する

F社では、会社の持っている各種データは、全員がアクセスできるフォルダに分かりやすく整理されています。F社はコンサルティング業を行っているので、過去に自社で行った仕事を参考にできる場面が多々あります。データを共有することで、重複した仕事をなくすことができ、非常に効率的です。日本の会社では、自分の部署の中ではデータを共有していたものの、他の部門のデータにアクセスすることはできず、問い合わせをしたり受けたりすることが多くありました。会社の規模が大きくなるとどうしても分業の必要度が高くなるので、「全てのデータを全員に見せる」ということは難しいのかもしれません。しかし、少なくとも可能なものは共有する方が、合理的だと感じました。

各種データだけでなく、スケジュールも全員に共有されています。F社ではOutlookのスケジューラーを使ってスケジュールを管理しており、全員のスケジュールを全員が見ることができます。打ち合わせを設定する時には「イベントの招待」機能を使い、相手のスケジュールを押さえることができます。また、設定をすれば、自分のスマートフォンからも会社のスケジュールを見ることができます。つまり、「相手のスケジュールを伺う」「決まった予定を相手に伝える」「相手のスケジュールを確保する」「自分の予定を手帳に記入する」「自分の予定を他の人に共有する」という動作を、全てスケジューラーソフト上で完結でき、ごく短時間に間違いなく行うことができます。日本の派遣元はスケジューラーを使っていなかったので、この快適さにはびっくりしてしまいました。(決して、派遣元の愚痴を言っているわけではないです!そして、マイクロソフトのセールスをしているわけでもないです笑)

紙を使わない

皆がアクセスできるフォルダにデータが保存されているので、紙を使って情報を保存したり共有したりする必要がありません。打ち合わせにはノートパソコンを持ち寄るので、いわゆる「打合せ資料」や「会議資料」を印刷することもありません。唯一紙を使うのは、作った資料の仕上がりや誤植を確認するために印刷する時だけで、確認が終わればすぐに捨てます。私は2か月間インターンをしましたが、机の上にあるのはパソコンだけで、紙資料は一切残りませんでした。当然、インターン最終日に机を片付ける際にも、一切ゴミが出ませんでした。他のメンバーも、紙資料は持っていませんでした。

日本で働いていた時にもなるべく紙資料を作らずに済むように工夫をしていました。しかしながら、ノートパソコンが貸与されていなかったり紙資料に基づいて打ち合わせが行われることがあったりして、完全にペーパーレスにすることはできませんでした。F社での経験を通じて、ペーパーレス化は個人の心がけの問題ではなく、組織としての仕組み作りの問題であるということを、認識しました。

送別会は3時のケーキ

日本で働いていた時には、「オフィシャルな飲み会(忘年会や送別会)」や「オフィシャルではないにせよチームのほぼ全員が出席するような飲み会」が、しばしば行われていました。仕事の都合、家庭の事情、プライベートとのバランス、金銭面等様々な理由から「今回は行きたくない」と思うことがあっても、「欠席はしづらい」という理由で参加する場合もあるのではないでしょうか?私自身は飲み会が嫌いではないのですが、それでも時々そういうことがあります。

F社では、オフィシャルな飲み会はありません。非公式の有志で食事に行くことはありますが、ランチであることがほとんど。また、ランチだろうがディナーだろうが、行きたい人だけが行きます。

転勤や転職で職場を去る人がいたらどうするかというと、3時にみんなでケーキを食べるのです。これなら、誰もが気兼ねなく参加できます。職場でのコミュニケーションとプライベートを両立させる、とても良いやり方だと感じました。

残業をしない

これは、最初は非常に戸惑いました。

日本で仕事をしていた時の感覚は、「やるべきことが終わっていないから、終わるまでやる」という感じでした。一切無駄なことをせず本当に絶対に必要な仕事だけをしていて、それでも仕事が終わらないから仕方なく残業していたのか、というと100%の自信があるわけではないです。しかし、少なくとも自分が残業してでも終わらせないと他の人の仕事に何かしらの影響を与えてしまうので、残業をしていたというのが正直な感覚です。

F社で働き始めた当初は、この感覚を持っていました。インターンが始まった最初の週に、上司に頼まれた資料作りに思ったより時間がかかり、19時頃まで会社に残ったことがありました。皆17時過ぎには退社するので私がオフィスを出るときには誰も残っておらず、次の日に上司から「夜遅くまで残る必要はないよ」と言われました。「やるべきことが終わっていないし、自分が上司に資料を見せないと次のステップに進めない。だから早く仕上げるべきだと思って残業をしたのに、どうするのが正解だったのだろうか?」と、戸惑う気持ちが残りました。「勤務時間中に効率良く働けばこなせる仕事の量が多くなり、結果残業しなくても仕事がまわせるかもしれない」とも考えましたが、そんなことを考えたからといって効率が上がるわけでもありません。

考えてもよく分からないので考えるのはやめることにして(笑)、みんなと同じように夕方になったら帰るようにしてみました。ということで、F社で2か月間働いた間、残業をしたのは1回だけでした。休日に仕事をすることも、一度もありませんでした。

なぜ日本の会社では残業をしなければいけなくて、なぜF社では残業をしなくても良いのか。この問いに対しての答えは、結局見つからないままでした。私はインターンだから割り当てられている業務量が少ないからなのかもしれないとも思いましたが、社内で他の人に聞いてみても「残業や休日出勤はしない」とのことです。元も子もないことですが、ひょっとしたら、日本の会社とF社では仕事の量と社員の数のバランスがそもそも違うのかもしれません。

ワークライフバランス

残業をしないことを含め、F社のメンバーは、仕事とプライベートのバランスをしっかりとっていました。アメリカ社会全般について言えることかもしれませんが、終業後や週末は家族と過ごす時間という意識が強く、日本のように毎日朝から晩まで仕事漬けで、土日はくたくた、ということはあまりなさそうです。
また、F社では、年に1度は3週間くらいの休みを取って国内海外問わず旅行に行くという人が多くいました。ありきたりな言い方になってしまいますが、ある程度の期間仕事から離れて自分のやりたいことを思い切りできる方が、人生が豊かになるように思います。結果、仕事でも新しいアイデアが浮かんでくるのだろうと思います。もっとも、彼らからすると「アメリカの会社は3週間しか休みが取れないからイケてない。ヨーロッパ人は何か月も休んでいる」とのことですが…。

働きやすさの作り方

F社のすごいところは、働きやすさをとことんまで追求していることです。社内システムも、仕事の進め方も、そして組織のカルチャーまでも総動員して、働きやすさを一貫して追求していることが、徹底していると思います。

この取り組みは、着実に成果を出しているように思います。多くの同僚が、「この会社の仕事のしやすさがとても気に入っている」と言っていました。また、夫婦共働きで子育て中の女性も何人も働いていました。 仮に定量的な数字、例えば定着率、 生産性 、そして創造性のような指標を見ることができたとしたら、いずれも高いのではないかと思います。 私自身も「イケている会社で働いている感」を日々感じ、毎日楽しく仕事をすることができました。

アメリカと日本の比較と言うよりは、F社と私の日本の派遣元の比較に見えるかもしれません。しかしながら、F社のやり方はアメリカのカルチャーの上に成り立っており、日本企業のやり方は日本のカルチャーの中で作り上げられてきたものであることは、間違いないと思います。すると、日本の企業で働きやすさを実現するためにはF社と違うアプローチが必要なのかもしれないし、F社と同じ環境を整備するだけでも相当な努力が必要なのかもしれません。社員は働きやすい職場が好き、社員のために働きやすい職場を作るべき、というのはある程度普遍的な考えでしょう。一方、その達成の仕方は様々で、国ごとあるいは会社ごとに、必要な取り組みは異なるのだろうと思います。

写真は、私のデスクです。インターンを通じて学んだことはまだまだあり、次回以降も引き続き書いてみようと思います。

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