サマースクールで読んだケース・論文

皆様こんにちは。今日もこのブログをお読みいただき、ありがとうございます。

近頃ワシントンDCでは、激しい雨が続いています。と言っても、ずっと降り続いているわけではなく、短時間に雷を伴う大量の雨が降り、数十分するともう上がっている、というような雨です。現地の人達の中には、傘を持ち歩いていない人も多いようで、雨の中を平気で(仕方なく?)歩く人もいます。雨の性質からして、傘を持ち歩くよりは、雨宿りでしのぐ方が合理的なのかもしれませんね。

さて、今日は、サマースクールの期間に読んだケース・論文のうち、興味深かったもの3本の、主な内容をまとめようと思います。

結婚している男性は給与が高く、子供がいる女性は給与が低い

米国における労働者の賃金を決定する要因を調べた研究をまとめ、考察を導き出しているレビュー論文です。
(Abbigail, J. C., & Michael T, O. (2003) Marriage, motherhood and money. The Regional Economist.)

・結婚している人と結婚していない人を比べると、男性では結婚している方が給与が高い(marriage premium)が、女性は差がみられない
・賃金が低い女性と賃金が高い女性を比べると、前者の方が子供の数が多く、また、より若い時に子供を持っている
・子供を早く持った女性と子供を遅く持った女性を比べると、前者の方が子供を持ったことによる賃金の減少が大きい

と言えるそうです。

この現象に対して、
・男性のmarriage premiumに関しては3つの解釈(雇用者が結婚している男性をひいきする、男性は結婚したら労働生産性が高まる、労働生産性が高い男性ほど結婚している)がある
・子供を持っている女性は、就労条件の柔軟な仕事を選び、結果的に賃金が低くなる
・女性は子供を持つことによって、生涯賃金を高めるのに必要な仕事上の経験や機会を逃している

等の解釈が与えられています。

授業では、
・この論文が発表された時期(2002年)と現在で、状況は違うのか?
・米国以外の状況はどうか?
について、議論しました。

African American的な名前の履歴書は不利

米国において、白人的な名前と、African American的な名前を比べ、就職に影響があるのかを調べた論文です。
(Bertrand, M., & Mullainathan, S. (2004) Are Emily and Greg more employable than Lakisha and Jamal? A field experiment on labor market discrimination. The American Economic Review, 94 (No.4), pp.991-1013)

【手法】
・架空のResume(履歴書)を以下の4パターン作成
(1)白人的名前・質が高い
(2)白人的名前・質が低い
(3)African American的名前・質が高い
(4)African American的名前・質が低い
※米国の履歴書は、写真を添付しないのが普通
※履歴書の質は、職務経験の長さ・ボランティア経験・従軍経験・Emailアドレスの有無・職歴の空白の有無・技能等でコントロール

・2001年~2002年、ボストンとシカゴの新聞に掲載された1,300の求人広告に2,400の履歴書を送付

・応募先からの電話連絡の有無と、名前・履歴書の質・職種・性別の関係を解析

【結果】
・白人的名前の履歴書は、African American的名前に比べ、電話連絡が50%多かった

・African American的名前の履歴書は、白人的名前の履歴書に比べ、履歴書の質による影響が少なかった
(African American的名前の履歴書は、質が高くても評価されない。または、African American的名前の履歴書は質を見るまでもなく落とされている)

新聞の求人広告という媒体に絞った実験なので、この論文の結論が労働市場全体に関して当てはまるかは何とも言えません。しかし、写真なしの履歴書でも、名前によって人種差別が行われていることが示唆される内容です。この実験からは意識的に差別しているのか無意識なのかは分かりませんが、どちらにしても、人種差別が存在していると言えそうです。
現在はどうなのか、webで応募するような求人でも同様の傾向が見られるのか、気になるところです。

成果を出すリーダーシップ

リーダーシップのタイプと効果的な使い方について解説した記事です。
(Goleman, D. (2000). Leadership that gets results. Harvard Business Review, March- April, 2-17.)

【6種類のリーダーシップ】
1.Coercive style
私が言うようにやれ!と細かいところまで指示するタイプ。組織にマイナスの影響を与えることが多い。
危機的状況の時や組織に激変を与える時などに効果的だが、組織の柔軟性やメンバーのモチベーションを低下させる。

2.Authoritative style
大きな方向だけ与え、具体的なアプローチは任せるタイプ。組織にプラスの影響を与えることが多い。
ビジネスがドラフト段階の際に特に効果的だが、専門家集団をマネージする際には効果的でない。

3.Affiliative style
人を大切にするタイプ。組織にプラスの影響を与えることが多い。
チーム内の調和やモラルを高めたいときに効果的だが、低いパフォーマンスを放置してしまう場合がある。

4.Democratic style
意思決定の際にメンバーの意見を重視するタイプ。組織にプラスの影響を与えることが多いが、それほどでもない。
組織を柔軟にし、責任意識を持たせ、新鮮なアイデアを出せる一方、会議が終わらなかったりメンバーがリーダー不在を感じたりする。

5.Pacesetting style
高い目標を設定し、リーダーが例示するタイプ。組織にマイナスの影響を与えることが多い。
メンバーの意欲と能力が高いと効果的だが、メンバーに負担感を与える。

6.Coaching style
短期的な成果よりメンバーの長期的な成長を重視するタイプ。組織にプラスの影響を与えることが多い。
すでに自己の弱みを把握し、かつ成長意欲のあるメンバーには効果的だが、変化を嫌うメンバーには効果がない。

【複数のリーダーシップタイプを身に着けるべき】
リーダーシップは先天的なものでも性格に結びついているものでもない。自分が実践できていないリーダーシップのタイプを理解し、トレーニングによって身に着けることができる。そのためには、自分の性質をよく理解することが必要である。
成果を出していないリーダーは、自分が身に着けているリーダーシップスタイルを過大評価する傾向がある。(自己認識の不足)

【リーダーシップスタイルの使い方】
状況に応じて必要なリーダーシップスタイルは異なる。複数のリーダーシップスタイルを組み合わせるべき場面もある。自分が欠いているリーダーシップタイプを持ち合わせたメンバーをチームに加えることもできる。

リーダーシップの分類はよく見かけますが、
・複数のリーダーシップスタイルを使い分けるほうが良い
・足りないリーダーシップスタイルを身に着けるには、自己認識とトレーニングが必要である

という点が、印象的でした。

他にも興味深いケース・論文を読みました。読むだけでなく、メッセージを自分の頭で消化することが必要だと感じています。

 

写真は、休日に出かけた、Smithsonian’s National Zooにて見つけたメリーゴーランドです。

 

 

よく見ると…

乗るのは馬ではなく、ゴリラやウサギやワシだったり、はたまたイカやワニやカエルだったりします。その名も、Conservation Carousel(直訳すると、保全回転木馬)。描かれているイラストや乗り物の動物たちに、優しさを感じました。

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