ワシントンDCの鉄道-アムトラック

皆様こんにちは。

学校が夏休みに入っているため、少し勉強から離れたことを書いてみようと思います。前々から書きたいと思っていた、「ワシントンDCエリアの鉄道」について書き始めてみようと思います。(興味のない方、ごめんなさい…)

ワシントンDCには4種類の鉄道がある

ワシントンDCには、以下の4種類の鉄道があります。

1.アムトラック(Amtrak)
2.地下鉄(Metrorail)
3.メリーランド地区通勤列車(Maryland Area Regional Commuter; 通称MARC)
4.ヴァージニア急行鉄道(Virginia Railway Express; 通称VRE)

いずれの鉄道もワシントンDCだけで完結してはおらず、隣接するヴァージニア州、メリーランド州あるいはさらに遠い地域まで運行されています。なお、ここではお客さんを乗せて運ぶ鉄道(旅客鉄道)のみを数えており、貨物を運ぶ鉄道は除いています。詳細は別途書こうと思いますが、純粋な民営企業はなく、全て公的な主体が運営しています。

今回は、アムトラックについて少し掘り下げて書こうと思います。他の鉄道についても、またの機会に書いてみようと思っています。

アムトラックとは(会社概要)

アムトラック(Amtrak)とは、National Railroad Passenger Corporation(全米鉄道旅客公社)のことで、米国各地で都市間を結ぶ鉄道を運行しています。アムトラックの会社概要によると、同社は公的機関ではなく営利企業ですが、連邦政府や州政府から補助金を受けて運営されています。主要株主は連邦政府で、役員は大統領の指名、下院の承認を経て着任します。

ウェブページの基礎情報によると、社のミッションは、人々、経済、そして国を前向きに動かす(moving forward)ような都市間輸送を提供すること。社員数は20,000名以上、1日の延べ利用者数は87,000名。

財務面は、2017年の収入が33億ドルであるのに対し、営業費と資本的支出を合わせ59億ドルの支出があったようです。一方、営業費の94.8%はチケット収入等で賄えているということです。設備投資のような資本的支出を含めると営業収益だけではカバーできておらず、「旅客鉄道を公的補助一切なしで運営している国はどこにもない」と、言い訳のような正当化のような文章も書き添えられています(笑)

運営面で日本の幹線鉄道と違うのは、Amtrakは自社の線路をあまり保有していないことです。後述の北東回廊を除くほとんどの線区で、貨物鉄道の線路を借りて運行しています。日本では、JR貨物の列車がJR旅客会社の線路を借りて運行するケースがほとんどで、日米の違いが興味深いです。なお、アメリカの大手の貨物鉄道(例えばUnion Pacific、BNSF、CSX等)はしっかりと黒字を出しています。

ワシントンDCのアムトラック路線

アムトラックの鉄道は、日本でいうところの、新幹線や特急列車のようなイメージです。山手線のような通勤列車は、あまり運行されていません。

主要な路線は、ワシントンDC~ボルチモア~フィラデルフィア~ニューヨーク~ボストンを結ぶ北東回廊(Northeast Corridor)の路線で、同区間にはアセラ特急(Acela Express)が一日16往復、快速列車(Northeast Regional)が一日20往復運転されています(平日の定期列車の数)。

例えば、平日にワシントンDCからニューヨーク方面に向かう場合、アセラ特急は始発が午前4:50発、最終は午後19:50発で、およそ1時間に1本が運行されています。快速列車は、始発が午前3:10発、最終が午後22:10発で、やはり50分から1時間に1本です。アセラ特急が快速を追い抜くことはないので、予約をせずに駅に来た場合、アセラ特急か快速問わず、先に出発する便に乗ることになります。

米国最大の都市ニューヨークと首都ワシントンDCを結ぶ路線なのに意外と少ないなという感じがします。東海道新幹線の運行本数が1日あたり上下合わせて365本で、東京~新大阪間の「のぞみ」が最大1時間10本であることを考えると、その差は歴然としています。

ちなみに、ワシントンDC~ニューヨークの距離は約350kmで、東京~名古屋の距離(営業キロで366.0km)とほぼ同じです。ワシントンDC~ニューヨークの所要時間はアセラ特急で約3時間、快速で約3時間30分である一方、新幹線「のぞみ」は約1時間40分です。所要時間の面でも、アムトラックはかなり見劣りすると言えます。さらにちなみに、日本の在来線特急と比較すると、例えば札幌~釧路が営業キロ348.5kmで、所要時間が4時間です。

会社概要によると、ワシントンDC~ニューヨーク間の移動に関し、アムトラックの旅客数は、全ての航空会社の旅客数の3倍以上ということです。確かに、MBAのアメリカ人同級生もニューヨークに行く際はアムトラックを使っている人が割と多く、よく利用されているという印象です。ことワシントンDC~ニューヨーク間においては、車社会・飛行機社会のアメリカにあって十分に健闘していると言えると思います。

ただ、アムトラックの中でもワシントンDC~ニューヨーク間は特別だと言われており、他の路線はさらに本数が少なく、所要時間も長いです。

なお、上記の路線を含み、ワシントンDCからは4方面への路線が放射状に伸びています。北へ向かう上記北東回廊、南へ向かいヴァージニア州の州都リッチモンド方面への路線、北西へ向かうピッツバーグ方面への路線、南西へ向かうシャーロッツビル方面への路線です。

北東回廊の列車の様子

私が実際に乗車した際の写真を載せてみます。

まずはアセラ特急から。
アセラ特急(Acel Express)外観外観です。全体は8両編成ですが、編成の一番前と一番後ろは機関車で、間にお客さんが乗る客車をつないでいます。うち1両は軽食を販売するカフェカーなので、実質的な座席は5両だけです。新幹線のようなスピード感のある(?)外観です。

アセラ特急(Acel Express)車内
車内はご覧の通り、暗いです。2名掛けの座席が2列並んでいます。座席は、ファーストクラスとビジネスクラスがあり、写真はビジネスクラスです。アセラ特急には値段の安い普通車(Coach Class)がないため、どうしても高いチケットを買うことになります。軽食や飲み物を売っているカフェ車両も1両あります。

日本と違っていて面白いのは、座席で携帯電話の通話がOKなことです。ビジネスパーソンがたくさん乗っており、皆パソコンを開いて仕事の電話をしています。1両だけ静かな車両(Quiet Car)があり、そこだけは携帯電話の通話が禁止されています。線路のせいなのか車両のせいなのかわかりませんが、全体的によく揺れるなあという印象です。コンセントやWi-fiが利用でき、その点は非常に便利です。

次は、快速列車(Northeast Regional)です。
Northeast Regional外観
Northeast Regional外観
同じく機関車が引っ張る方式です。車内の写真は取り損ねてしまいましたが、やはり2名掛けの座席が2列並んでいます。座席は、ビジネスクラスと普通車(Coach Class)の2種類。カフェカー、静かな車両(Quiet Car)があるのは、アセラ特急と同じです。やはりよく揺れ、そして空調が効いており非常に寒いです。コンセントやWi-fiが利用できて便利なのですが、全体としてさほど快適ではないかなぁという印象です。

ワシントンDCのターミナル Union駅(Union Station)

米国の国会議事堂であるUnited States Capitolの少し北にあるユニオン駅(Union Station)が主要ターミナルとなっています。

外観は、ヨーロッパの古い建物を思わせる美しい建築です。
ユニオン駅(Union Station)外観
ユニオン駅(Union Station)外観

コンコースも、広々としており、神々しさも感じます。
ユニオン駅(Union Station)コンコース

何回利用しても、毎回写真を撮りたくなってしまう美しさ。
ユニオン駅(Union Station)コンコース

 

アムトラックによるワシントンDC地区のファクトシートを元に計算すると、ユニオン駅のAmtrakの1日あたり乗車人員は約7,200人で、JR五日市線の秋川駅(東京都あきる野市)やJR予讃線の松山駅(愛媛県松山市)とほぼ同じです。Amtrakは通勤列車より長距離列車が主体であることを考え、新幹線のみの乗車人員と比較してみると、北陸新幹線の長野駅(長野県長野市)より少し少ない程度です。やはり、日本の駅と比較すると、利用者数はかなり少ないことが分かります。

ちなみに、アムトラックで一番乗車人員が多い駅はニューヨークのペン駅(Penn Station)で、1日の乗車人員は約14,200人。JR南武線の尻手駅(神奈川県川崎市)や九州新幹線・JR鹿児島本線の熊本駅(熊本県熊本市)と同程度です。新幹線の乗車人員に限定すると、上越新幹線の高崎駅(群馬県高崎市)とほぼ同じです。

なお、他社線の利用や乗降客以外の来訪者も含む、1日にユニオン駅を訪れる人の数は約70,000人とのことです。駅構内には、レストランや雑貨店のほか、ユニクロのようなアパレルも入っています。ただ、日本のエキナカのような便利なものでもありません。

列車本数は1日約85本で、4割以上がニューヨーク方面の北東回廊の列車ということになります。
ユニオン駅(Union Station)発着案内

切符は、窓口でも自動券売機でも購入できます。
ユニオン駅(Union Station)切符売り場

 

アメリカの鉄道の実態

さて、ユニオン駅の外観やコンコースが美しいのは先ほど述べた通りなのですが、実際に列車に乗るためのホームに行くと…。

ホームは真っ暗で、ものすごい騒音です。
ユニオン駅(Union Station)ホーム

アメリカの首都の駅にしては、なんとも簡素で年季の入ったホーム。
ユニオン駅(Union Station)ホーム

アメリカ社会における鉄道の位置づけを実感するような、設備です。アムトラックは、資金面の制約から設備投資が遅れており、事故も頻発しています。トランプ政権はインフラへの大規模な投資を表明しており、下院の民主党の議員団からも、鉄道インフラの近代化と安全性向上のために500億ドルの投資が必要だとの指摘がされています。将来は、このユニオン駅も近代的な利用しやすい駅になるのでしょうか…?

今回は、ワシントンDCの鉄道の全体像と、アムトラックについて書きました。アムトラックについては、財務面や営業面でも非常に興味深い事柄が多く、またいつか記事にしたいと思います。また、ワシントンDCの他の鉄道についても、また改めて記事にしようと思います。

皆様良い一日を!

「ワシントンDCの鉄道-アムトラック」への2件のフィードバック

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